トランク探偵第7回
トランクから発見されたもう一つの手紙。便箋にタイプライターで打たれたもの。
これは厚紙に写真と一緒に挟まれていた。
封筒はない。
ところどころ、打ち間違えたところがあり、上から正しい文字を打ち直していたり、消してあったり、スペースを空けるのを忘れて、手で「/」を入れてあったりとこれを書いた人物がパチパチとタイプを打っているところが目に浮かぶようだ。
手紙の内容は以下の通り。
_______________________
August 14th, 1916
My dear Cousin,
Many thanks for your letter of 21st June, which was forwarded to my new address. I won’t give it you here as I am not certain whether I shall be here for any length of time.
Sure, I getting along quite well and keeping absolutely in the pink of condition. I shall be very glad when I am able to any good bye to this life and there is a certain someone at home who will be equally glad, I can assure you. We have not yet decided where we shall live after the war, but I should not be surprised to find ourselves somewhere out of England as I am quite sure that there will not be much fun in staying in “Blighty.” Gladys, too, is very anxious to go abroad.
It is true that I do not get a great deal of time for letter writing, but I only write to those who write to me & you are a very good correspondent.
That was quite a coincidence that you should meet that fellow. I have met several who have been to Cairo and had rather a good time there, as usual.
Ronald is about 7, but really I could not tell you exactly how old he is. I am very pleased to say that he is doing slightly better just lately, and it is to be hoped that he will eventually recover. He has been away in hospital for over three years.
No, I did not forget to put in that photo, but when I came to send you one off, I found that I had run short, so I had to wait until I had some more printed. I send one this time, and I hope you will forgive me.
Things are going along as per and one of these fine days we may meet somewhere in the East, as it is East that we shall go when the war is over, after a suitable holiday.
Can’t stop to write more now,
Love from both of us,
Your affectionate Cousin
Harold(サイン)
_______________________
手紙の内容は短く、前にやり取りされた話題を受けるものが多い。
そのため、ちょっと意味が分かりにくいところもあり、和訳に苦しんだ。しかし生徒探偵たちは果敢に取り組んだ。
_____________________
1916年8月14日
愛しのいとこへ
以前(6月21日)に、私の新しい住所へ転送された手紙に深く感謝します。私はどれくらいこの場所にとどまるか定かではないので、ここの住所をあなたに差し上げることにはいたしません。
確かに私は今の生活で健康のままうまくやっています。この生活にお別れできることになれば、私も家で待つ家族もうれしいでしょう。私達は戦争のあと、まだどこに住むかは決めていませんが、イギリスの外に出て行くことになってもそれほど驚くことではありません。なぜならここ住み続けてもあまり楽しくないでしょう。私の愛しいグレイディーズも国外に住みたがっています。
今、私はあまり手紙を書く時間がありませんが、手紙を書いてくれる人やあなたには書きます。
あなたが私の知人に会うとは何たる偶然でしょう。私は他にもカイロに行ったことがある人に会ったことがありますし、他の旅と同じようにカイロを楽しみました。
ロナルドは7歳ぐらいです。しかし正確には彼が何歳なのかはっきりとは言えません。近頃は、以前よりは体調がよく、ゆくゆくは回復することを望んでいます。彼は私たちと離れて、病院で3年間暮らしています。
もちろん、写真を同封することを忘れはしませんでしたが、送ろうとした時に足りないということに気付き、もっと現像されるまで待たなければなりませんでした。今回は1枚しか送れないことをどうかお許しください。
ものごとはうまく進んでいます。戦争が終わったら行くかもしれない所は東ですので、東のどこかで会えるといいですね。
今はもうこれ以上書くことは出来ません
愛する二人より、あなたの優しいいとこより
ハロルド(サイン)
____________________
訳すにあたって、文中にある『Blighty』が、祖国であるイギリスを意味する語句であることを学んだ。
『戦争』とは、日付が1916年であることから、1914年に始まった第一次世界大戦のことであろう。
またこれを書いたハロルドという人物は結婚しており、ロナルドという名前の病弱な息子がいる様子である。
さらにあちこちを旅しているようでもある。
戦争が終わったあとにも国外に出るかもしれないことを匂わせ、その場所が東であると書いている。
東(East)は、おそらくアジアを指している。
先にも書いたように、この手紙は、すでにやり取りされた手紙の話題に対して書かれているため、分かりにくい部分も多い。
読者のみなさん、何かひらめくものがありましたらご連絡下さい。お待ちしております!
※ トランク探偵シリーズ ※
第1回を読む / 第2回を読む / 第3回を読む / 第4回を読む / 第5回を読む / 第6回を読む