高校1年生 LONDON OUTING
アウティング当日、今日は時々小雨の降る天気と聞いていたが、幸い雨は降っていなかった。
予定通り10:00にコーチで学校を出発、11:30丁度にバッキンガム宮殿の脇に到着した。衛兵の交代は11:30から。先頭を行く女子生徒たちが小走りに歩道を進む。それが駆け足になると、宮殿前の広場の人だかりが目に飛び込んできた。
低い雲に反響して衛兵が演奏するマーチの音が妙に大きく聞こえる。手に手にカメラやビデオを持つ群衆の後ろで生徒達はつま先立って衛兵が通り過ぎるのを見守った。「あと10分早く着いてたらなぁ…」 衛兵が宮殿の門の中に消えていくと、係の人たちの指示で群衆が動き始める。「まだ終わっていませんよ。暫くしたら交代した衛兵がまた出てくるから、通りの向こうに渡って待ちましょう。」と担任の先生。ヴィクトリア記念碑のある広場の真ん中に移動するとバッキンガム宮殿の全景が見えた。
門の内側では衛兵が声を張り上げて儀式めいたことをしている。「夏だとよく写真で見る真っ赤な服なのに。冬の服はちょっと地味だなぁ。」と生徒がポツリ。何曲も演奏が続く。寒くなって来た頃、担任が近くにいる生徒達に話し始めた。「君たち知ってる、あの衛兵の人たちがかぶっている毛皮の帽子? ひとつ作るのに熊1頭分の毛皮を使うのよ。それでね、ポールマッカートニーって知っているでしょ、ビートルズの。その娘さんが結構有名なデザイナーで、あの帽子を作るのに熊を殺してその毛皮を使うなんてちょっと時代錯誤だって訴えたんだけどね、そしたら… 」気が付くと正面の門がスーッと開いて衛兵が美しい列を作って進み出てきた。目の前をあの「熊の毛皮でできた」高い帽子をかぶった衛兵が演奏をしながら通り過ぎてゆく。写真をとる生徒、顔を見合わせながら嬉しそうにはしゃぐ生徒、ジッと行進に見入る生徒… 寒い中待っていた甲斐があった。「結構良かったね。」「思ってたよりおもしろかった!」 最後はみんなでヴィクトリア記念碑の前で記念撮影をした。
Kensingtonの少し先にあるWestfield Shopping Centreで班ごとに昼食をとり、しばしショッピングを楽しんだ後はトラファルガースクエアに移動。ナショナルギャラリーで絵画の鑑賞をした。Sainsbury Wingのホールで担任からワークシート記入方法の説明。出発前に学校で配られた手作りのワークシートだ。「ただダラダラと絵を眺めるだけではつまらない。何か目的を持って鑑賞させた方がいい。」そんな担任の気持ちが伝わる工夫された問題がきれいにレイアウトされている。説明が終わるとさっそくグループごとに大きな美術館をまわり始めた。問題は全部で7問。そのうちの3問は「ウォークラリー」という見出しと絵のタイトルが書いてあるだけ。「ウォークラリーと書かれた問題は、絵の前にいる先生を見つけて、その先生から問題をもらって下さいね。」と説明があったものだ。担任と副担任2名の計3名がこの大きな美術館のどこかに立っている! 時間は1時間! 「絵に近づきすぎたり、大きな声で話したりしないように。マナーを守って下さい。」との注意もあったので走るわけにもいかず、各グループ、ワークシートを手に真剣に館内を歩き回った。「あっ!いたっ!先生、どの絵ですか?問題は?」「この絵の中には作者の遊び心が隠されている。それを見つけて、ワークシートの欄に記入して下さい。絵の横にある説明にヒントがあるよ。」必死に英語の説明を読む生徒。係の人に質問するグループもあった。
あっと言う間に時間が過ぎ、再びSainsbury Wingのホールに集合して解散した。班ごとに夕食をとるために大きな回転ドアを通ってロンドンの町に出て行った。が、ホール横のショップに男子の班が1つまだ残っていた。「君たち、まだ行かないの?」担任が様子を見に行くと、館内の絵を紹介する本を皆で眺めているところだった。「見つからなかった絵があるんですよ。これに載ってないかなぁと思って…」
ニコッと微笑む担任。手作りのワークシートは大成功だった。
夕食後はレスタースクエアに全員時間通りに集合。コーチの移動時間や集合点呼、今日は気持ちのいいくらいすべてが時間通りだった。そして心配されていた天気も、午後は時折明るい日も差すほどで、最高の思い出になりそうな1日だった。日の暮れたロンドンはイルミネーションが美しい町に変わっていた。まだアウティングは終わらない。最後の締めは、ミュージカル「マンマ・ミーア」! ABBAのヒット曲で綴られるロンドン初演の名ミュージカルだ。場内にABBAのヒット曲が流れ始めると生徒たちの視線はブルーの照明があてられた幕に一斉に集まり、その幕がスーッと上がった瞬間からステージに釘付け。前半はビートの効いたリズミカルな曲が続き、手拍子をしながら自然に体が左右に動いた。後半のしんみりと聞かせる曲にもまた別の感動を覚えた。そしてフィナーレはみんな総立ちで両腕を高く挙げて左右に振り、今にも踊りだしそうなくらい盛り上がった。これでおわりか…ちょっと物足りない気分でいると、主人公のドナが観客に向かって叫ぶ。「One More?!!!!」
名曲「Dancing Queen」の前奏が流れ始めると再び大歓声があがり勢い良く手拍子が始まった…。
最後にシアターの前で全員で写真を撮った。今日撮ったどの写真よりもみんな良い顔をしていた。