「日本の美しさと深さ」

       本校のチャプレンによる連載記事第2回目

髙野 晃一

私は今から45年前にカンタベリーの神学校で1年学び、35年前には北のダラムに近い教会で2年働き、7年前に立教に来ました。これで3度目のイギリス生活です。

イギリスでも今では年毎に食材は豊富になっていますが、海外に住むと日本食の美味しさに気付きます。

日本では当たり前の食べ物が、何でこんなにも美味しかったのかと思います。

前のイギリス生活がロンドンから離れていたこともあって、日本食は全く手に入りませんでした。

日本からの来客のお土産「チキンラーメン」を、家族皆で分け合って食べた時の美味しさは今でも忘れられません。

海外で生活をしてみると日本食と同じように、日本の美しさや深さに目が開かれます。最初カンタベリーの神学校に来た時、私は日本語の「旧新約聖書」と斉藤茂吉「万葉秀歌 上下」を持って来ました。

日本では落ち着いて読めなかった万葉集を、一日に一首ずつ繰り返し読み、日本語の通じないイギリスで日本語の美しさ深さに触れ学びました。

 また日本は仏教国ですから、神学校の友達から仏教に就いて度々聞かれましたが、大学で英米文学科出身の私はシェイクスピアやワーズワスは知ってはいても、大乗仏教に就いては全く答えられず大変恥ずかしい思いをしました。それで日本に帰国してからは出来る限り万葉集や大乗仏教の本も読み、その素晴らしさに眼が開かれました。

幸い関東と大阪にも住めたので、実際に自分の足で万葉や日本仏教ゆかりの地を訪ね理解と感動を新たにしました。

 

衾道(ふすまじ)を

引手(ひきで)の山に妹を置き

山路を行けば生けりともなし

 

妻を亡くし三輪山近くの引手の山(竜王山)に埋葬し、ひとり山路を帰る私は生きている心地も無い、柿本人麻呂の悲痛な和歌です。

現在も桜井から天理まで通じる日本最古の街道「山の辺の道」は、万葉の和歌と深く関わっているゆかりの地です。

 

なにとなく心騒ぎていねられず 

あしたは春の初めと思えば

 

雪深い越後の国上山、五合庵の良寛さんの和歌です。

厳しいイギリスの冬から春の気配を感じる季節には、この和歌の心が通じ合う気がします。

 第二次世界大戦後日本は封建主義の名のもとに、その長い歴史を通して養い育てて来た素晴らしい伝統を、ほとんど捨て去ってしまったのではないかと思うことがあります。

日本を離れて海外から日本を見詰めると、返って日本の美しさ深さを見出せるのではないか。

私自身が生徒たちと共に学びながら、今でも毎日新鮮な日本の発見をしています。

 

 

※チャプレン挨拶のコーナーは以下のサイトからご覧下さい。

http://web.me.com/rikkyouk/RikkyoSchoolinEnglandOfficialWebSite/chaplain.html

  
  

本校で14年に渡って校内施設のメインテナンスやクリーニングを行い、ドライバーとしても活躍してこられたMr. Horneyが本日をもって引退されることになりました。

生徒たちは既に帰宅してしまった後でしたが、全教員が昼食前に集まってMr. Horneyに感謝の意を表しました。

全スタッフを代表して棟近校長からプレゼントの包みが渡されると大きな拍手がおこりました。

 

1972年の開校以来、教室棟/管理棟/体育館/陸上トラックなど次々と新しい建物が建設され、近年ではサッカーピッチやテニスコートの再整備が行われるなど本校の施設は目覚ましい勢いで拡充されてきましたが、一方で100年以上の歴史を誇る元マナーハウスやそれに付随する古い建物なども校内のあちこちに点在し、そのメインテナンスは学校の維持には欠かせないものです。

Mr Horneyは生徒がいない休暇中になればドミトリーの壁を塗り替えたり、学期中に施設の故障があればすぐに来て直してくれたり、入学式や卒業式などの式典が近づくと中庭の敷石や管理棟入口の大きな階段にウォータースプレーをかけて掃除をしてくれたりと、本校の為、生徒たちの為に労を惜しまず尽くしてくれました。

生徒たちを近くの医者や病院に連れて行くのも彼の仕事ー 保健室のスクールメイトロンと一緒に必要とあればすぐに生徒たちを送っていってくれました。

校内ですれ違えば「Hello!」の言葉をいつでもかけてくれる笑顔の優しい英国人紳士でした。

 

つい先日の大雪の時には、地元の学校はほとんどが休校。

全寮制の本校は全生徒が校内で生活しているので、近くの村に住む教員も一面の銀世界の中、全員がなんとか自力で車をだして出勤。

ほとんど車通りがなかったのは、こんな日にはイギリス人達はまず働きにでないから。

ところが、Mr Horneyをはじめとする本校のイギリス人スタッフはこんな日でも朝から出勤して下さり、早速校内の雪掻きを始めてくれました。

昼食が始まる頃にはドミトリーと教室、食堂の間には両側が真っ白な雪で飾られた可愛い小径ができていました。

そしておじさん達がさらにずっと向こうで次の小径を作って下さっているのが見えた時には、本当に頭の下がる思いでした。

 

長い間どうもありがとうございました。

 

  

 

     
     

 

 

今夏、ケンブリッジ大学で行われた日英高校生によるScience Workshop。その「Cambridge Science Workshop特集」にあわせて本校から参加した生徒のエッセイをご紹介します。

 

   *   *   *   *   *

 

あぁ、いつも通りの朝。すこし寝過ごしたみたいだけど、家ではよくある事。あの刺激的で最高なイベントの翌日、心地の良い疲れをまだ体に感じる。

ここは自分の部屋、隣には幸せそうに眠っている紳士の国の友達はいないし、ベッドの横には中身が若干溢れているトランクケースなんて無い。今日はどんな実験をやるのだろう、とか、今日の朝食にはあのヨーグルトは出るだろうか、等を考える必要もないわけだ。

何故なら、あのイベントはもう終わってしまったから。

もうすこし長くても…と、参加した誰もが思っていることだろう。

やっぱり、参加して良かった。

 

『Smile and the world smile with you?☺』これが僕の研究グループの題。「笑顔は人を笑顔にする。」そんな誰かの格言みたいな事、本当にあったらそれはそれは素敵じゃないか?

笑顔が笑顔を生み、最終的にはその場の皆が笑顔になる。そんなお伽話みたいな事…と思うかもしれない。

でも、現実に無いと思ったらそれはハズレ…実際は、ある。

Cognitive Neuroscience  Analysis Group 所属だった僕が言うからには、間違いは無いよ。

僕が行った実験は、Faceleader3.0というソフトを使い、映像を通して人の表情を細部まで読み取り、分析するというモノ。

被験者には前方に設置されたスクリーンに次々と映し出される人の顔に焦点を合わせてもらう。もちろん、何も考えずに。

この実験の結果、『人は表情を無意識に相手に合わせる』という事が解った。

つまり先述した「笑顔は人を笑顔にする。」これは証明されたことになる。

 

サイエンスワークショップ、これには『言語の壁』がつきまとうと思っていた。

伝えたいことをうまく英語に訳せず、会話が止まってしまう等の障害だ。確かに、初日の僕はそうだった。

誤解を恐れ、ろくに発言しなかったと思う。

しかし、このままではマズイ、と二日目からは文法等を気にせずに、とにかく伝えたいことを相手に示すようにした。文ではなく単語だけだったり、時にはジェスチャーで。

それからというもの、実験は円滑に進み、気分も相当楽になり、自分自身かなり満足した。『決意は壁を超える』これは今回のイベントで得たもうひとつの答えだ。

 

サイエンスワークショップで一番印象に残ったのは、英人の友達と腹を抱えて笑いながら互いの拳をコンッとぶつけた事。英国では日常的に行われる行為だとしても、僕は他国の習慣に触れることができたのだと感動した。今回の僕の目標、「同世代の人との国際交流」は果たされたように思える。これほど興味深く貴重で楽しい、一生忘れられない思い出をつくる機会を与えて下さった人々に、深く感謝します。

 

(高等部2年 男子)

 

 

  

 

高校2年生から私立文系コースの生徒たちは必修で英国人による英作文の授業をとります。

その成果の集大成として、先学期は英語によるオリジナルmagazineを作成しました。

そして実質上最後の学期となる今学期は、英語でオリジナル脚本を書き上げ、それをミニ映画として仕上げることができました。

その様子を担当教員のレポートで以下にご紹介します。

 

   *   *   *   *   *

 

H3 Composition Class – Film Making

 

The H3 Composition class should feel very proud of their achievement this term as they brought together many ideas, skills and talents to produce a film in English called “Angela”.

 

In September they began the task of writing the script.  First, the students discussed together the outline of the plot and then spent time adding further details.  All students were responsible for writing different parts of the script, which tackled the problem of bullying at school.  The scripts were re-drafted until the story had been developed fully. 

 

All students had either a part to play in the film or took responsibility for a ‘behind the scenes’ role as director, assistant director and cameraman. 

 

The filming took place at school and the students showed an imaginative use of classrooms and props. 

 

We were very impressed at how quickly students learned their lines and performed, which is not an easy task in a foreign language.  Their director spoke in English, so the students had to listen carefully during rehearsals and filming too. 

 

We hope the H3 students enjoyed this experience to work together as a group and that it will be a cherished memory of their last term at Rikkyo.  

 

 

 

E.C. Head  Ms Rose

 

  

この夏ケンブリッジ大学で行われた日本とイギリスの高校生によるサイエンスワークショップは、本校の理科教員でChemistryを担当している岡野教頭とClifton Scientific TrustのDr Alboneの両博士が企画者。

 

日英の高校生を科学という絆で結び「科学の探究」に新たな基準を作ろうという両氏の意気込みは、今年10年目を迎えるワークショップ開催地を科学研究の最高峰、ケンブリッジ大学に選んだことにも良く表れています。

 

この夏の成果を各方面に報告するレポートがDr Alboneから送られてきましたのでご紹介させて頂きます。

 

 ↑ Clifton Scientific TrustのDr Albone

 

レポートはこちらの「Science Workshop特集のページ」からダウンロードしてご覧下さい。

 
 

週に4時間あるイギリス人教員によるECの授業では、5年ほど前から「Credit」というポイントシステムが導入されています。

授業に積極的に参加した生徒や宿題をパーフェクトにこなした生徒などにポイントが与えられ、毎週末イギリス人と日本人の英語教員によるミーティングでそれぞれの生徒のCredit内容と数を確認して集計をしていきます。

 

学期末にはクラスの平均Credit獲得数が計算され、最も優秀なクラスには「Special English Dinner」の栄誉が与えられます。

また、個人別にも年間を通して集計が行われ、5つでBlonze Prize、10でSilver Prize、15でGold Prizeが授与されます。

昨年、一昨年は高校3年生を中心に熱心に取り組む生徒が多く、最高で25を超えるCreditをとった生徒が出てきたため、20でPlatinum Prize、25でDiamond Prizeも新設されました。今年度もまだ2学期目ですが、既に高校3年生が1人、Platinum Prizeを獲得しています。

 

最近ではECの授業だけでなく、希望者がイギリス人教員と定期的に昼食をとる「イギリス人特別テープル」での会話努力もクレジットの対象にするなど、あらゆる機会を通して生徒たちの積極的な英語への取り組みが評価できるよう工夫しています。

 

今年度からイギリス人教員による英語の授業(EC)がコミュニケーションスキルズを重視した形態に移行し、生徒たちはイギリス人教員だけでなく現地校の生徒たちや町で行き交う人たちと話すことを一段と求められるようになっています。このクレジットシステムがうまく機能して、恥ずかしがり屋の生徒もより積極的に英語を話せるようになれば何よりです。

 
 

 

学校説明会実施

12月7日(火)に 、立教大学太刀川記念館多目的ホールで本校の学校説明会が行われました。

主として来年(2011年)1月23日(日)実施の小学部/中学部入学試験のための説明会でしたが、受験対象となる小学生保護者ばかりでなく、イギリスにある本校に興味を持つ中学生や高校生も来場し、ホールがほぼ満員となる盛況でした。

本校教務主任の今多教諭がパワーポイントによる説明を約30分行った後、質疑応答の場が設けられ、続いて個別相談も行われました。

イギリスならではのホームステイ、ネイティブスピーカーによる英語の授業、ハーフタームの過ごし方や実際に学校を訪問して見学できるかなど質問は多岐に及びました。

この日は受験生とその保護者の他にも、海外子女教育団体・広告会社・外務省・企業教育担当・塾・受験情報社の方々など本校の教育に関心のある方々にもたくさん来場していただきました。

また、来年度より留学制度を実施する予定の香蘭女学校の生徒たちも訪れ、立教大学における学校説明会は盛況のうちに終了致しました。

 

小学部・中学部入学試験の受付は来年(2011年)1月10日から始まります。

詳しくはこちらからご覧下さい。

http://web.me.com/rikkyouk/RikkyoSchoolinEnglandOfficialWebSite/admission.html

  

 

Cambridge Science Workshop 特集                              

 

2010年8月1日より、英国ケンブリッジ大学を会場として、日英高校生を対象にした科学ワークショップが開催された。

2001年に初めて英国ブリストルで行われたサイエンスワークショップ、2003年の立教英国学院でのパイロットプロジェクト、そして2004年より京都で始まった日英隔年開催のワークショップは今年10年目の節目を迎え、科学研究の世界の最高峰であるケンブリッジ大学で開催する運びとなった。

本校は2001年より企画運営に参加しており、今年で第7回を迎える。

今年は直接ケンブリッジ大学の科学研究者より指導を受け、英国人高校生と共に最先端の科学を探求、実験、調査、討論、発表することを特に目指した。

ケンブリッジ大学、マリーエドワードカレッジに英国人高校生と共に宿泊し、科学を学ぶだけでなくお互いの文化を学びあう、国際理解、文化交流も目的の一つである。

日本からの、文部科学省によって指定されたスーパーサイエンススクール5校の生徒・教員27名に加え、本校からは5名の生徒が参加した。

英国側6校の学校からは同世代の高校生22名が参加した。

ワークショップに先立って、日本側参加者を対象に、プレワークショップ(ロンドン研修)を企画した。

立教英国学院を起点としてロンドンに外出し、近代科学の原点であるロイヤル・ソサエティ(王立協会)をはじめとする諸学術学会、王立研究所、自然史博物館、大英博物館を訪問し、科学の本物に出会うことができるような研修を行った。

多感な高校生のこの時期にワークショップに参加する経験は、今後の高校生活にあたり、将来展望、学習の動機、進路、進学の面でも大きな影響を与えたものと考えている。

本校教員代表として参加した岡野はその企画運営、小林はワークショップの記録の面で、ケンブリッジで行なわれた初めてのワークショップの運営に協力した。

 

 

プロジェクトテーマ

今回のプロジェクトテーマは、化学、物理、生態学、生命科学の4つの領域に分かれている。

いずれのプロジェクトでもケンブリッジ大学で活躍する先端研究者の指導をお願いした。

それぞれのプロジェクト中で指導される先生方に、高度な研究、機器に触れるだけでなく、先生方が行っている実験の意味、役割、社会との繋がりを、実験を、また先生方の研究姿勢を通して高校生が学ぶことができるように特にお願いをした。

本校の5名の生徒達はそれぞれ、「脳の認知」、「将来の電子機器」、「神経細胞の退化」、「南アメリカの蝶の生態」、「テントウムシとその寄生」の各プロジェクトに参加し、GCSEで鍛えた英語力を駆使してケンブリッジでの初めてのワークショップの成功に大いに貢献した。

 

 

 

化学分野

化学分野では、ケンブリッジ大学化学学部シャーマン博士の指導によりナノ粒子の化学的合成の実験を行い、化学分野におけるナノテクノロジーの先端研究とその限界を体験することができた。

同時にこのプロジェクトでは指導してくださる研究者と高校生の間で活発な質問が交わされ、シャーマン先生はその質問の質の高さに驚いていたことが印象的であった。

シャーマン博士は今回のプロジェクトの指導研究者として真っ先に名乗りをあげていただいた先生であり、若い高校生の時にこそ、先端研究者との交わりの経験をすべきであり、科学への情熱をもつ若者が増えれば未来への財産になるとの考えを持っておられる。

今後もケンブリッジでのワークショップでの中心指導者として活躍して頂けることを期待している。

 

 

 

物理分野

物理分野はケンブリッジ大学物理学部、キャベンディッシュ研究所、日立ケンブリッジ研究所の協力で行なわれた。

ケンブリッジ大学が輩出した85名のノーベル賞受賞者のうち、この研究所研究者だけで29名を占めている。

マックスウェル、ラザフォード、トムソンなどの物理学者、遺伝子構造の決定をしたワトソン、クリックらがこの研究所で実験をしたことを考えると、科学研究を目指すものにとっては身震いする思いがあり、理系の高校生にとっては夢のようなできごとである。

このプロジェクトでは将来の電子機器へのナノテクノロジーの応用をテーマに日英の9名の生徒達が極小のナノの世界に挑戦をした。

浮遊のゴミが全くないクリーンルームでの電子機器の中心部分である基盤回路の製作は、先端の科学技術に触れるだけでなく、大学とは異なる企業レベルでの研究の意味、更に日本を代表する企業がケンブリッジで研究所を持つ意義について、国際的チームワークの重要性について体験することができたと思う。

 

 

生態学

ケンブリッジ大学生態学部で行なわれたプロジェクトは、レン博士、マルガリータ博士の指導により、マディングリィーにある新装新たな生態学部の建物で日英18名の高校生が3つの班に分かれて行われた。

『テントウムシとその寄生』、『蛾の生態とその寄生』、『南アメリカの蝶の生態』についてである。

他プロジェクトが研究室の中で行われたのに対して、フィールドワークが主体となり、テントウムシ、蛾を追い求めて生徒達は網を片手に採集に努めた。

最初は蜘蛛、蛾といった昆虫に叫び声をあげていた女子生徒もレン博士の何と美しい昆虫達だろうの声に、昆虫達の持つ不思議さ、美しさを感じることができたのではないかと思う。

テントウムシは在来の七星テントウムシに加え、外来のテントウムシが発見され、その旺盛な食欲により在来種のテントウムシの減少、またテントウムシに寄生する寄生虫のメカニズムも調査した。

蛾のチームは英国を代表するホースチェスナット(栃の木)に寄生する蛾の調査を行い、ここでも、テントウムシ同様、自然界が持つバランスのとれたメカニズムの不思議さを感じ取ったと思われる。

南アメリカ蝶の生態については、熱心に南アメリカで森林の保護を訴えているマルガリータ博士の指導で、蝶は学習するかの研究を行った。

高湿度、スコールさえ降る季候コントロール室で、汗をかきながら、そしてスコールに濡れながらも、異なる色に集まる蝶の生態調査を行った。

ハイテクノロジーの技術ばかりが最新の先端研究ではなく、このような地道な作業が地球環境を守っていく一つの道であることを体験したに違いない。

 

生命科学


生命科学のプロジェクトはケンブリッジ郊外にあるベイブラハム研究所で行なわれ、日英16名の高校生が、生物情報科学、脳の認知、神経細胞の退化、細胞間の信号に関する探求実験を行った。

これらのテーマは学校では学ぶことのできない難しいテーマであったが、人間が抱える老化の問題、アルツハイマー病、画像認識に関する第一線の研究者による興味あるテーマに高校生が挑戦した。

この研究所では生命倫理に関する討論も活発に行なわれ、実験面だけでなく、研究者が抱える倫理面での問題に、慣れない英語を駆使しながらも何とか自分達の考えを伝える日本の高校生達の姿が印象に残った。

 

 

プレゼンテーション

ワークショップの最終日には、生徒達のこの一週間のワークショップの成果を発表する研究発表会が嘉悦ケンブリッジ教育文化センターで行われた。

日英の高校生、引率の先生方、指導して頂いた研究者の方々、併せて100名ほどの出席があり、それぞれのプロジェクトグループからの発表があった。

実験の成果だけでなく、ワークショップの経験を通して得られた体験も生徒から語られ、国際交流として科学が果たすべき成果を十二分に感じられる発表であった。

2001年ブリストルの発表に比べると、日本の高校生の落ち着いた態度、わかりやすさ、機知にとんだスピーチを楽しむことができた。

英国を代表する学術会議である王立協会会長であり、ケンブリッジトリニティーカレッジの学長でもあるリース卿の高校生への励ましの言葉、英国化学会チーフエクゼグティヴであるパイク教授からそれぞれのプロジェクトへのコメントを頂けたことは、主催者としてこの上ない栄誉である。

 

 

将来展望

ケンブリッジでの初めてのサイエンスワークショップは無事成功裏に終了することができた。

今までは日英隔年の開催であったが、2011年については、日英同時開催の準備を進めている。

京都では京都教育大附属高等学校を中心として、8月中旬に京都大学で開催される予定である。

一方、英国では7月中旬にケンブリッジ大学での開催を予定している。

今年同様、本校でのロンドン研修も企画されている。

2011年ケンブリッジでのワークショップでは、広く門戸を開き、日本全国の高校へその参加を呼びかけることにしている。

 

 

報道

今回のケンブリッジ大学での取り組みは、朝日新聞(九月五日付)で報道され、ケンブリッジ大学、ベイブラハム研究所、ロンドン日本大使館、京都教育大学附属高校、横浜サイエンスフロンティア高等学校のホームページにも紹介されている。

 

       ※ ケンブリッジサイエンスワークショップ特集はこちらから。

 

ケンブリッジ大学

http://www.admin.cam.ac.uk/news/dp/2010080401

ベイブラハム研究所

http://www.babraham.ac.uk/news2010/09-aug.html

在英国日本国大使館

http://www.uk.emb-japan.go.jp/en/event/webmagazine/young_scientist.html

朝日新聞記事

http://www.asahi.com/edu/news/TKY201009060132.html

立命館守山中学校・高等学校

http://www.ritsumei.ac.jp/mrc/ssh/ssh-news/2008/080801/news.html

京都教育大学附属高等学校

http://www.kyokyo-u.ac.jp/koukou/sshp05/diarypro/diary.cgi?field=19

横浜サイエンスフロンティア高等学校

http://www.city.yokohama.jp/me/kyoiku/sidou2/koukou/sfh/gaiyo/schoollife/inter_prog.html

 

  

 

立教歳時記  連載第8回

コマドリ(Robin)

 

特徴的な赤い胸を持つコマドリは、イギリスではRobinと呼ばれ、人々からよく親しまれている。

クリスマスカードにも雪の中の姿、スコップの柄に止まっている愛らしい姿が使われている。

庭でもよく餌をついばむ姿が見られ、枯葉を集めたり、土を掘り起こしたりしていると、必ず後ろで佇んでいる。

好物のミミズが掘り起こされるのを待っているためであるが、庭仕事が大好きなイギリス人の良き友人として知られている。

好奇心が強く、人の姿も恐れない。掘り起こしたミミズをあげればすぐに飛んできて啄ばんだりする。

3月にもなると、巣作りが始まり、軒の下、温室の中、ガレージの中、時には植木鉢の中など、身近な場所に巣をつくることも人々から愛されている所以であろう。

反面、他の鳥に対しては縄張り意識が強く、その赤い胸を誇示しての威嚇、攻撃は激しい。校内でもいろいろな場所でコマドリを見かけることができるが、特に本館前の石灯籠周辺には今の時期、ヒイラギの赤い実を啄ばむ姿、落ち葉をひっくり返している姿を見かけることができる。

日本ではコマドリの美しい特徴的な鳴き声はウグイス、オオルリと共に三大鳴鳥として知られている。

その鳴き声が馬の鳴き声に似ているとのことで、駒鳥の名がつけられたようである。

イギリスでは夕方、あたりが暗く静かになり始めた頃に最初に鳴きだすのがコマドリである。

時には明るい照明のそばで夜半まで鳴くために、ナイチンゲールと間違われることもあるようである。

イギリスは昨年、今年と2年連続の大雪、寒波のために多くの小鳥達を失っているとの報告がある。

特にコマドリは昨年に比べ20%以上もの減少が伝えられている。

夏から比較的安定した温暖な天候が続いたため、今年はカシの木、栃の木、ヒイラギなど、立教の樹木達は多くの実を実らせ、特にヒイラギの木にはたくさんの赤い実が見られていたが、雪が融けた今、これらの赤い実は一切無くなってしまった。

積雪の間にツグミ、コマドリ等の小鳥達が食べ尽くしてしまったと思われる。

これからまだまだ続く厳しい寒さにこの冬をのり越えることができるか心配だ。

 身近に見られる鳥であるために、古くからよく本の中、詩の中にも登場する。

雄同士の激しい縄張り争いは時には死に至る場合もあり、マザーグース童話集、Who killed the Cock Robin? でも、コマドリを殺した犯人探しが取り上げられいる。

その他、多くの推理小説の中でこの詩が取り上げられ、展開が興味深い。

 

Who killed Cock Robin?       

誰が駒鳥 殺したの?

I, said the Sparrow,        

それは私と 雀が言った

With my bow and arrow,       

私の弓と 私の矢で

I killed Cock Robin.        

私が駒鳥 殺したの

(中略)

All the birds of the air        

空行くすべての鳥たちは

Fell a-sighing and a-sobbing,    

ため息ついて啜り泣く

When they heard the bell toll   

鐘の音 高く響き渡る

For poor Cock Robin.        

哀れな駒鳥 弔うために

 

※今までの【立教歳時記】コーナーはこちらからご覧下さい。

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