「ケンブリッジは何もないよ。」
先輩達に聞くと必ず同じ答が返ってきた。そのため僕はあまり期待をせず、何を食べようかということしか頭になかった。丁度お腹がすいてきて、ただ座っているのに飽きてきた頃、バスの窓からまるでお城のようなケンブリッジ大学群のひとつが、今後数時間の活動を予想しているかのように、太陽の光に照らされて現れた。多くのヨーロッパの国を旅してきた僕は、懐かしいような温かい気持ちになった。どんな発見があるのだろうかと初めての町への期待を募らせた。

 

「なんだ、何にもなくないじゃないか。前回のアウティングよりも楽しいぞ。」
自由時間で班行動をしていて僕はそう感じた。釘一本使わず、今もなお堂々とそこに佇んでいる「数学橋」。本物ではないが、その木の前にニュートンが立っているのをつい想像してしまう「リンゴの木」。小説「モモ」の灰色の男達と同じようなものかな、と想像したくなる「タイムイーター」。寒かったが、ヴェネチアのゴンドラを思い起こさせる「パンティング」。みんなでお揃いで買ったパーカー。カメラの枠に収められ、立教に帰って暫く経った今でも僕の印象に強く残っているケンブリッジの街並。

 

しかし、その中でも特別印象に残っているのは、ガイドツアーで入れてもらったトリニティ・カレッジの中庭だ。1歩足を踏み入れたとたん、
「すごい!」と、バルセロナの「サグラダ・ファミリア」を見た時と同じ声が漏れた。
外側から眺めても見えなかったものが見えてきた。きれいに整備された芝と道の真ん中にある建物が太陽の光に照らされて僕の中でグッとくるものがあった。また、有名な学者達が昔、僕と同じこの道を歩いたのだと思うと、感動と共に想像することが出来て楽しかった。
もし僕にケンブリッジ大学に入れるだけの頭とお金があったら絶対に行きたいと思える程ぼくの心に訴えかけてきた。

 

ケンブリッジはもっと時間が欲しいと思った。もっといろいろな小道を歩いてみたかった。今度は家族とゆっくりと見てまわる機会があればいいと思った。

 

アウティングに行く前、僕はケンブリッジについて何も知らなかった。せいぜい知っていることといえば世界の一位、二位を争う名門大学であるということぐらいだった。でもケンブリッジを知るにつれて、一つの興味深いことを知った。それは「進化論」や「種の起源」で有名なダーウィンがケンブリッジ大学出身だということ、そして彼のコレクションが飾られている博物館があるということである。僕は半ば強引に班員を引き連れてセジウィック地球科学博物館へと足を運んだ。

 

 博物館で僕らを最初に迎えてくれたのは巨大なイグアノドンの化石だった。いきなりこんなものを見せられてはたまらない。僕の興味心はうずき、胸は期待で膨らむばかりだった。中へ入っていくと、肉食恐竜や象、鹿の頭部の化石やアンモナイトや草木の化石などとても豊富な種類の化石があった。首長竜の化石は形が復元されていて、これが海を泳いでいたと思うとゾクゾクした。中でも、クモの化石には驚いた。五十センチメートルもの巨大な化石だったのである。立教の森にもひょっこり出てきそうな迫力だった。この他にも沢山の貴重な展示物をこの目でしっかりと見ることができた。まるで古代にタイムスリップしたような、そんな感覚を味わえた。

 

 今回見た化石の中にダーウィンのコレクションはあった。きっと僕がこの博物館で最初に感じた興味心と同じような気持から、彼は研究をスタートしたのではないかと思う。それはダーウィンだけでなく、ケンブリッジや世界の科学者たちも同じであろう。この少しの興味心を忘れずにこれから過ごしていきたい。そんなことを思った、ケンブリッジのアウティングだった。
(高等部1年 男子)

 

 

 

オープンデイ。生徒たちにとっては1年の中で一番大きな行事。日本の「文化祭」にあたる行事です。

各クラスで1学期から準備を始める「クラス企画」、興味を共有する有志が集まって毎週日曜日準備を続けて完成させる「フリープロジェクト」、父母の会の方々と高校3年生が協力して運営するレストラン、和菓子、ラッフル、焼き鳥、古本販売等、盛り沢山の内容です。
当日は地元のイギリス人はもとより、ロンドンやヨーロッパの保護者の方々もたくさんいらっしゃいます。

 

地元の町や村にクラスで交代で出掛けて「オープンデイのビラ配り」をしました。1軒ずつ家々をまわって配っていきます。

 

10月25日、イギリスと日本を拠点にソリストとして精力的な活動を展開するヴァイオリニスト、川畠成道氏を本校にお迎えしてコンサートとワークショップが開かれました。一昨年、去年に続いて3回目の来校です。今回のワークショップには、11月にロンドンで行われる創立40周年記念コンサートでヴァイオリン演奏をすることになっている中学校3年生と高校1年生の女子2人が参加。それぞれ30分ずつ川畠さんからマンツーマンでヴァイオリンの手ほどきを受けました。

 

世界を舞台に活躍するヴァイオリニストに直に指導してもらえるとあって最初は緊張の面持ちでしたが、ロンドン記念コンサートでの演奏に抜擢されたこの2人ですから、練習が始まって曲を弾き始めるとすっかり落ち着きを取り戻し、疑問に思っていた技術や曲想作りについても積極的に質問をするなど、時間の許す限り熱心に川畠さんのアドバイスに耳を傾けていました。
「かなり良い感じで仕上がりつつありますね。」
最後に嬉しい感想を頂いてニッコリ。ロンドンコンサートに向けてまた1つ自信がついたようで、2人にとってはとても貴重な経験になりました。

 

毎回精力的にワークショップをして下さる川畠さん。その後はそのままステージの上で1時間のリハーサルを終え、夕食は生徒たちと一緒にホールで召し上がりました。そしてコンサート本番…

 

7時を過ぎた頃から地元イギリス人の方々が続々と到着。本校での川畠さんのコンサートも今年で3回目とあって、楽しみにして来る方も大勢いらっしゃったようです。高校1年生と2年生が夕食後にテキパキと動いて作り上げた約300席の会場がほぼ一杯になるといよいよステージ上に川畠さんとピアノアカンパニストの今井氏が現れ盛大な拍手がおこりました。
まずはモーツアルトのヴァイオリンソナタ、そしてブラームスのソナタと続いた後、10分のブレイクを挟んでSzymanowski、Wieniawskiと現代的な曲を披露。最後は皆に馴染みのあるカルメンのテーマを使ったWaxmanのCarmen Fantazyで終わりました。
艶やかでしかも限りなく透き通ったその魅力的なヴァイオリンの調べは、時に優しく、そして時に力強くホールに響き渡り、この夜ここに集まった人たちを不思議な魔力で魅了してくれました。

 

「どんな曲でもクライマックスは1つだと思って下さい。いろいろなところに盛り上がりを作ってしまうと曲がよく分からなくなってしまいますからね。この1つのクライマックスに向けて曲を作り上げていくことが大切ですよ。」

 

ワークショップで生徒にして下さっていたアドバイスの意味がはっきりとわかったような気がする素晴らしいコンサートでした。

 

アウティングで行く場所を先生から聞いた時の歓声と、実際に行って見た時の感動が忘れられない。私達M3とM3以下一同はワーナー・ブラザーズ・メイキング・オブ・ハリーポッターに行った。ここにはハリー・ポッターの映画を撮影した時に使われたセットや衣装などが展示してある。新聞でその記事を読み、いつか行ってみたいと思っていた矢先、アウティングで行くことになり、行く前日は嬉しすぎて他の事が考えられなかった程である。

 

 アウティング当日。朝、バスに乗り込み、10時過ぎにはスタジオに到着。スタジオの前でその雰囲気に感動し、中に入ってハリー・ポッターの世界に再び感動した。でも、その感動はまだ序の口。スタジオ・ツアーで通されたシネマ。その先には展示室。展示には衣装、セット、小道具、何から何まですべてハリー・ポッター。その世界にどっぷり漬かって見ることができる。校長、ダンブルドアの部屋、学校の絵画、とにかく全てがハリー・ポッターの為だけにスタッフによって、一枚一枚描かれ、造られ、そこにあった。私はハリー・ポッターの世界が本当にある様に思えてならなかった。この映画に携わった一人一人が全身全霊をかけて造り上げている物一つ一つが力強く、繊細で美しく、映画の為に造られた物として、どうしても見れないのである。

 

 映画の世界の裏には、綿密な設計と、技術があることも知った。ホグワーツ魔法学校の内装図、外装図、そして模型。全てが精密で、出てくるのは感嘆の声だけだった。
 現実の世界に引き戻されるはずのショップでも、感動は絶えなかった。魔法の杖、制服、箒。見て回るだけで楽しかった。いるだけでわくわくして、幸せだった。もっといたい。そう思える楽しさがあった。

 

 今回、ワーナー・ブラザーズに行って、私は初めて映画を、「世界」として見た。その世界を創るには、スタッフ一人一人のパッションと、団結力が必要なこと、そしてそこに、スタッフのやりがいを見出しているんだ、と感じた。ハリー・ポッターという世界に魅せられたからこそ、ワーナー・ブラザーズはハリー・ポッターを映画にし、私達に見せてくれた。それに魅せられた私達は、ハリー・ポッターという世界に魔法をかけられた、といえるかもしれない。その魔法は気付かない内に消えてしまう。この魔法、感動をずっととっておきたい、そして、分かち合いたい、そう思う。

 

フライデースポーツでお世話になっているステーブル(乗馬場)はゴダルミンという町の向こうにある。
イギリス南部の丘陵が広がり、羊がのんびりと草を食み、春になると農地がきれいにならされて、夏を終えると豊かな実りが馬の上から臨める。

 

夏になると、このステーブル前で毎年見るのがサクランボだ。
ステーブルに入る小道の脇のかわいらしい家から桜の木が広がっており、小道の上にたわわに実ったさくらんぼたれさがり、とてもおいしそうだ。

 

一人一人、今日乗る馬をリクエストし、フィールドに出ると眼前に広がるのはトウモロコシの畑。
それはそれは広くて、畑の傍をゆったりと散歩したり走ったりする。
2学期になるとトウモロコシの実が大きく育っている。
残念ながらこのトウモロコシ、私たちの食べるためのものではないようだ。
おそらく家畜の飼料である。
なぜなら11月までそのままであるから。

 

そうそう、夏の終わりからブラックベリーも食べられる。
ブラックベリーは実のない時期にはただのイバラの茂みにすぎないが、
夏の終わりから実がつきはじめ、赤かった実が紫紺色にかわってくると、急に印象がかわる。
散歩道を歩く人々がちょっとしたおやつにつまんで舌を楽しませてゆく。
乗馬の散歩道の入り口にはこの茂みがあり、馬の上からベリーをつまむのも生徒たちの楽しみ。
高いところに生っていて、馬の上からでないと取れないのも楽しいのだ。
立教騎手たちは、なぜか行きには食べない。必ず帰りにつまんでゆく。
1時間の散歩を終えて、ほっとする気持ちの表れなんだろうか。

 

騒がしいバスに2時間以上揺られて着いたのは長閑で古風な大学都市ケンブリッジだった。
英国の誇るべき「ケンブリッジ大学」は一体どれほど豪華なのだろう、と思っていたところ、31の「学寮(College)」の集合がいわゆる「ケンブリッジ大学」だったので、少し切なかった。堂々と構えていて欲しかった……。
それはさておき、ケンブリッジの町を回って印象に残っていることが3つある。

 

1つ目は、やはりその長い歴史である。13世紀まで遡るケンブリッジの成り立ちを知ると、歩いた道、目にした建物にも貫禄を感じた。今日まで何百年も学生が過ごしてきた地は、いろんな過去が積み重なってそこに存在するようで、人間くさかった。

 

2つ目もこの地の歴史から深く考えさせられることだが、人間の可能性というものを感じた。というのは、黒死病の話を聞いた時にその病が猛威を振るった地に自分たちがいることが衝撃的だったのだ。最近は戦争もなければ、不治の病も少ないのが当たり前になっているが、昔は常に死と隣り合っていた。今の安心できる世の中を構築するために大役を買っているケンブリッジでも、その疫病は身近な死であった。そう考えると、医療分野に限らず、ここまでの社会、いや世界を作った人間は、計り知れない可能性を秘めているんだと思った。

 

しかしこんなお堅い大学都市にも、憩いの場というのがある。それは、水の上、舟の上である。これが今回3つ目に印象深かったパンティングだ。もしかすると、一番ケンブリッジ生の感覚に近づいた時だったかも知れない。有名な化学者、物理学者が過ごした学寮を川からゆっくり眺めるのは本当に心地良かった。立教での慌ただしい生活に思わず「疲れたね。」と言ってしまうこともあるけれど、もう一踏ん張り気合を入れていこうと思えた。ケンブリッジの学生たち、あるいは教職員たちも、暖かい日差しを受けながら、パンティングで和んでいるはずだ。彼らも、気合を入れて歴史的な発見や発明に行き着いたのだ。

 

今回のアウティングでは、英会話のみならず、あらゆることに刺激を受けた。人の考え方、歴史の伝わり方、土産屋の作戦。パンティング料金の値切り術はあと一歩だったけれど、とても貴重な体験の数々であった。この経験を次に活かし、さらに知識や人間性を高めていきたいと思う。
(高等部1年生 女子)

 

来る11月17日(土)午後3時より、ロンドンの ST.JOHN’S SMITH SQUARE にて、創立40周年記念コンサートを開催いたします。

 

本校では、創立以来、5年毎の節目の年に、ロンドンにて記念コンサートを行なっております。
今までウィグモア・ホール、パーセル・ルーム、クイーンエリザベス・ホールなど、ロンドンの著名なコンサートホールを会場として参りました。
今回は、ビッグベン(国会議事堂)に程近い、ST.JOHN’S SMITH SQUARE での開催となります。1728年に建てられた壮麗なバロック建築のホールです。

 

このコンサートのために練習を重ねてきた生徒たちの演奏をお聴きいただければ幸いです。

 

入場ご希望の方は、こちらのフォームにご記入の上、ファックス/メール/郵送のいずれかでお申込ください。チケットを郵送させていただきます。

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