明日から夏季休業に入ります。
夏季休業は毎年ありますが、皆さんの今の学年での夏季休業は今回1回限りのものです。有意義な夏季休業になるよう、計画をしっかり立てて取り組んでください。
7月の初めにボーイング社の新型旅客機787が日本にやってきました。“ドリームライナー”と呼ばれるこの旅客機は、飛行性能に優れた夢の次世代中型機として注目されています。ANA(全日本空輸)は、最初に完成する1号機の購入を始め、計50機の購入を決めています。今回は、日本で就航する前に各空港との適合性を検証するテスト飛行のためにやってきました。
ボーイング社の責任者が会見で次のように述べています。「 787は日本で生まれた旅客機だと言ってもよい。機体を構成する全部品の35%を日本のメーカー(三菱重工、川崎重工、富士重工)が製造しています。さらに、タイヤはブリヂストン、機内エンターテインメントシステムはパナソニックが供給しています。そして、東レが開発した新しい炭素繊維複合材がなければ787は存在し得ませんでした。」
787には、さまざまな先端テクノロジーが凝縮されています。なかでも注目を集めているのが、ボディや主翼に採用された新素材です。従来の旅客機に使用されてきたアルミ合金に代わり、全重量の50%以上にカーボンファイバー(炭素繊維)をベースにした複合材を採用しています。これにより機体の大幅な軽量化が可能になり、787は同クラスの従来機に比べ20%もの燃費効率向上を実現しています。
その787の機体に使うカーボンファイバー(炭素繊維)を、16年間供給する契約を東レとボーイング社が結んでいます。契約の調印式で、東レの社長の榊原定征(さだゆき)さんはこう挨拶しました。「私の高校生の時の夢が、本日現実のものとなりました。」
今から50年ほど前、榊原さんが高校生の頃、学校の図書館にあった雑誌の記事に目が止まりました。「夢の材料“炭素繊維”が日本人研究者の手で発明されました。」という記事でした。炭素繊維の重さは鉄の4分の1、強さは鉄の10倍。炭素の糸なので、錆びたり腐ったりせず、伸びたり縮んだりもしません。榊原さんは、「この技術で世の中を幸せにしたい。」と思いました。
大学は工学部の応用科学科に入学。大学院を修了する時に、偶然東レが炭素繊維の研究を行っていることを知り入社します。入社5年後、念願の炭素繊維の研究グループの一員となりました。
炭素繊維のように軽くて強い素材で作った飛行機なら安全性が高まる上燃費も良くなると考え、航空機製造会社に売り込みますが、採用されるまでには長い時間と努力が必要でした。飛行機の材料であるアルミ合金は金属の「板」、炭素繊維は「糸」。どちらが丈夫なのか?どちらが安全なのか? 最初は比較する方法さえなかったそうです。やがて性能が認められ、1975年のボーイング737から機体の一部に採用され始め現在に至ります。
榊原さんは次のように語っています。
「私は夢を実現することができました。でも、実現できなかった夢だってたくさんあります。大切なのは大きな志、高い目標、そして夢と希望を持って生きること。いろいろなことに興味や関心を持ち、美しいことには素直に驚き、感動する感性を持ち続けること。世の中には、まだまだ分からないことや感動することがたくさんあります。それを自分の目で見てみたい、自分の力で解明してみたい、そういった夢や志をいつまでも持ち続け、その実現に向けて前向きに努力すれば、いつの日か道は開け、その夢や志が実現する日が来ると思います。」
しっかりと噛みしめたい言葉だと思います。
夏季休業中は、自由に使える時間がたくさんあります。日頃なかなかできないことに進んで挑戦してみてください。皆さんの人生の良い転機につながる何かを掴むことができるかも知れません。
9月1日には、皆さんそれぞれが、何らかの新しい収穫を得て登校できるよう期待しています。